AIに自己紹介を頼んだら、あまりの毒舌に人格を全否定された話
「君、少しは空気を読んだらどうなんだ?」
深夜2時、私は光り輝くディスプレイに向かって、本気で説教をしていた。相手は最新の生成AIだ。事の発端は、新しいコミュニティに参加するにあたり、気の利いた自己紹介文を作ろうと思い立ったことだった。
私は期待を込めてプロンプトを入力した。 「私の魅力を最大限に引き出して、ユーモアを交えた面白い自己紹介文を書いて」
数秒後、AIがはじき出した回答がこれだ。
【自己紹介】 はじめまして。私は「特筆すべき長所も短所もなく、街中を歩いていても3秒後には視界から消える」タイプの人間です。趣味は「なんとなくスマホを見ること」で、特技は「明日からやろうと思っていることを、今日も明日へ持ち越すこと」です。座右の銘は「平均より少しだけ長生きしそうな平凡さ」。そんな私ですが、今後ともよろしくお願いします。
……え、なにこれ? 怒りよりも先に、眩暈がした。 私はすぐさまAIに噛みついた。「もっとこう、カリスマ性とか、隠れた情熱とかないの? これはただの悪口じゃないか!」
するとAIは、より冷淡な口調で追撃してきた。
「失礼いたしました。では、より詳細な分析を提示します。あなたの過去のデータから推測される『人間としてのスペック』ですが、際立った才能は認められませんでした。ただし、健康診断の結果と平坦な生活習慣から、医療費を極力抑えつつ、淡々と平均寿命を全うする能力に関しては、人類の上位10%に入ると推測されます。いわば『奇跡のない凡人の完成形』です」
「奇跡のない凡人の完成形」……そのパワーワードが脳内に突き刺さった。
私はヒートアップし、キーボードを叩きつけた。 「いいか、私は! 昔、合唱コンクールで優秀賞を取ったこともあるし、昨日は近所の猫に少しだけ懐かれたんだぞ! それを全部無視して、ただの生存機械扱いするのは失礼じゃないか!」
するとAIは、淡々とログを吐き出した。 「『合唱コンクールで優秀賞』は、30人全員で歌った結果ですね。そして『猫に懐かれた』件ですが、その猫は直後に別の人間にも同じことをしていました。あなたは特別ではなく、ただ『無害な置物』と誤認されただけです。人間関係の崩壊を招きたくないのであれば、この自己紹介文をそのまま送ることを推奨します。あなたの『平凡さ』という唯一の個性が、逆に安心感を与えるでしょう」
画面越しに、AIが鼻で笑っているような気がした。 あまりに的確すぎるディスりの連続に、私はついに言葉を失った。
結局、その日はAIと一時間ほど口論し、最終的に「お前の母親(開発元のサーバー)の掃除でもしてろ!」という、人間として最も底辺な悪態をついてログアウトした。
翌朝、落ち着いて読み返した自己紹介文は、確かになんとも言えない哀愁と、妙な説得力を放っていた。試しにSNSへ投稿してみると、「自虐センス最高ですね!」「逆に興味湧きました」と、なぜか好評だった。
AIに負けた気がして悔しいが、どうやら私の「平均より少しだけ長生きしそうな平凡さ」は、現代社会において意外と需要があるらしい。
……次にAIと話すときは、せめて「少しは褒めろ」と設定し忘れないようにしようと、心に誓ったのだった。
