実家から届いた「冷蔵庫サイズの段ボール」を開けたら、地獄のような光景が広がっていた
一人暮らしの狭いアパートに、突然、宅配業者の悲鳴が聞こえた。 「あ、あの……お荷物です。かなり……かなり重いんですけど……」
玄関先に現れたのは、もはや家電量販店で新品の冷蔵庫を買ったのかと疑うレベルの巨大な段ボール箱だ。差出人を見ると「母」の二文字。送りつけられた心当たりはゼロだが、胸が高鳴る。お米か? それとも実家の畑で採れた野菜か? 期待に指を震わせ、カッターでテープを切り裂いた。
箱の蓋を開けた瞬間、私は言葉を失った。
そこには、白く積み上げられた「トイレットペーパーの壁」がそびえ立っていた。1パックや2パックではない。業務用かと思うほどの、山のような個数。そしてそのペーパーの隙間から、強烈な甘い香りと共に、「半分に切られたスイカ」がラップに包まれて鎮座していた。
「……何事?」
私は思考停止のままスマホを手に取り、迷わず母に電話をかけた。呼び出し音のあと、母の能天気な声がスピーカーから響く。
「あ、届いた? よかったー!」
「いや、いいけどさ……何なのこれ。トイレットペーパーの量、どうしたの? あとスイカ。なんで半分?」
母は、まるで「今日のお天気がいいわね」と話すようなトーンで答えた。
「ああ、トイレットペーパーね! こないだテレビで『災害の備蓄は大事』ってやってたでしょ? だからスーパーで特売やってたときに、あんたの分も買っておこうと思って」
なるほど、親心か。……いや、それにしても量がおかしいだろ。
「で、スイカは?」
「ああ、スイカ! あれはね、スーパーでおじちゃんが『最後の一つだ、半分にしてやるから持っていけ』って言うから買ったんだけど、半分じゃ冷蔵庫に入らなくって。あ、そうだ、あんたの所に送ればトイレットペーパーの隙間にちょうど収まるんじゃないかと思って!」
……隙間に収まるんじゃないかと思って。
「お母さん、スイカって重いし汁出るし、トイレットペーパーと一緒に入れたら……」
言いかけるより早く、私は箱の中を確認した。案の定、スイカの断面から染み出した甘い汁が、トイレットペーパーの底面をしっかりと侵食し、紙特有の「あの食感」になりそうな柔らかい塊を作り上げていた。
「もしもし? どうしたの?」
母の問いかけに、私はトイレットペーパーの山を抱えながら、力なく呟いた。
「……今日からウチ、トイレットペーパーがスイカの匂いするわ」
結局、私はその日から一週間、毎日スイカを食べる羽目になった。トイレットペーパーの在庫は、その後半年間、我が家のトイレを「極限の備蓄状態」へと変貌させた。
母の天然は、今日も元気に物理法則を無視して我が家に届く。次はどうか、スイカと一緒にダンベルだけは送らないでほしいと、切実に願うばかりだ。
