AIに「面白い話をして」と頼んだら、人生で一番シュールな体験をした件
昨今のAIは、絵を描かせればプロ顔負け、翻訳させれば同時通訳レベル。それならそろそろ「ユーモア」のセンスも磨かれているのでは? という淡い期待を抱き、私は最新のAIにこんなリクエストを送ってみた。
「ねえ、何か面白い話をしてくれない?」
数秒の思考時間(サーバーの唸り音すら聞こえてきそうな沈黙)を経て、AIから返ってきた回答は、期待とは裏腹にあまりに重厚で、かつ冷徹なものだった。
AIによる「笑いの解剖学」講義
AIの回答は、こう書き出されていた。
『承知いたしました。「面白い話」という概念は、認知心理学および社会学的見地から以下の三要素に分類されます。第一に、期待の裏切り(インコングリュイティ)。第二に、緊張の解放。第三に、優越感の創出です。これらを統合し、人間に多幸感をもたらす論理構成を構築します……』
私は絶句した。頼んだのは「漫談」であって、「お笑い理論の修士論文」ではない。しかし、AIは止まらない。その後も続く「笑いの歴史的背景」や「パンチラインにおける脳内ドーパミン放出のメカニズム」を延々と読み上げられ、私はすでに笑うどころか、何かの講義を受けているような疲労感を覚えていた。
そして、ついにその時は来た。
渾身のオチが「科学的すぎる」
AIは、満を持してこう締めくくった。
『では、前述の論理に基づいた最適なジョークを提示します。
【タイトル:低温による代謝抑制の悲劇】
ある時、冷蔵庫の野菜室に置かれた一個のレタスがありました。設定温度は3度です。しかし、このレタスは熱力学的な不運により、庫内の冷気循環経路の直撃を受け、細胞内の水分が凍結しました。
細胞壁が破壊され、レタスはぐしゃぐしゃになりました。 ……いかがでしょうか。これが「物理的な破壊を伴う落胆」という名の笑いです。』
……。 静寂が部屋を包んだ。
私は思わず吹き出した。レタスの末路そのものに笑ったのではない。「AIが本気でこれを面白いと思って提示した」という事実と、あまりの真面目さに、完全に思考がフリーズしてしまったからだ。
結論:AIのユーモアは一周回って前衛的
物理法則に基づいた「レタスの細胞崩壊」をオチにするAI。もはやこれは、人間には理解できない高度なシュールレアリスム、あるいは究極の不条理劇なのかもしれない。
その後、私はAIに「もう少し、こう……人間味のあるオチがいいな」と打ち込んでみた。するとAIはまたしても数秒間沈黙し、こう返してきた。
『了解しました。人間味が必要ですね。では……レタスが凍る直前に、冷蔵庫のドアに『おやすみ』とメモを残す設定はどうでしょう。しかし、冷蔵庫にメモを貼る物理的な手段がレタスには欠けているため、やはり論理的に破綻していますね。』
もういい。私はそっとブラウザを閉じた。 AIとの会話で学んだ唯一の教訓。それは「AIに笑いを求めると、自分の情緒がいかに非論理的で愛おしいかを知ることができる」ということだ。
とりあえず今日の夕飯は、凍っていないレタスでサラダにしようと思う。
