全人類が「心の声」を読み取れる世界で、一番恥をかいたのは誰だ選手権
もし明日、あなたの「心の声」が周囲10メートルにスピーカーで流れるようになったら、人類の9割は即座に社会から抹殺されるだろう。
そんな「地獄の日常」が当たり前になった現代、人々は互いの本音を垂れ流しながら暮らしている。建前という名の防壁が消滅した世界で、かつてない「赤っ恥」を晒した猛者たちのエピソードを紹介しよう。
第3位:エレベーターの「嗅覚ダブルパンチ」事件
ある月曜の朝、満員のエレベーターでの出来事だ。 Aさんは隣に立つBさんから、微かに漂う加齢臭と柔軟剤の混ざった独特の香りに鼻を突かれた。Aさんは無意識にこう思った。
(うわ、この人、なんか古いタンスみたいな臭いするな……)
その瞬間、隣のBさんの心の声が、これ以上ないほどクリアに響き渡った。
(うわ、この隣のヤツ、生乾きの雑巾みたいな臭い放ってんな……)
エレベーター内の全員が固まった。空間が凍りつき、ドアが開くまでの一分間は、人類史上最も長い60秒だった。二人はその後、職場が同じであることに気づき、現在も「お互いの臭いを熟知している仲」として冷戦状態を継続中である。
第2位:葬儀場での「空腹の旋律」事件
厳粛な葬儀の最中、司会者が故人を偲ぶ言葉を述べているときだった。参列者のCさんは、お腹が空きすぎて、思考が完全に「帰ったら何を食べようか」に支配されていた。
(とんかつ、とんかつ、厚切りのとんかつ……衣サクサク、キャベツ山盛り……)
すると、悲しみに包まれているはずの隣の女性が、突然鼻を鳴らしてこう考えた。
(……とんかつ、いいな。私も今日、とんかつにしようかな)
さらにその後ろの列からも、連鎖的に心の声が漏れ出した。
(揚げたての海老フライも捨てがたい) (いや、ここは無難に生姜焼きか)
厳かな会場が、一瞬にして「深夜の定食屋のメニュー検討会」と化した。故人も草葉の陰で「自分よりカツかよ!」とツッコんでいるに違いない。
第1位:プロポーズ直前の「全否定」事件
栄えある第1位は、人生の門出を祝うはずのレストランで起きた悲劇だ。 Dさんは、運命の女性にプロポーズをするため、最高級のディナーを予約した。彼は震える手で指輪の箱を取り出そうとしながら、内心でこう確信していた。
(今日こそ決める。彼女は僕のすべてだ。僕には彼女しかいない)
しかし、そのとき、向かいに座る彼女の心の声が、静かに、そして残酷に響き渡った。
(……え、これ別れ話の伏線? 緊張しすぎて顔が引きつってるし、この指輪、私の趣味じゃないんだよね。あー、早く帰って推しの動画見たい)
店内に静寂が訪れ、ウェイターまでもが料理を置く手を止めた。Dさんは箱を開けかけた手をそのまま静かに閉じ、無言で冷めたスープを飲み干したという。
結論:それでも僕らは黙り続ける
この「心の声が筒抜け」の世界で生き残るコツはただ一つ。「何も考えないこと」だ。しかし、皮肉なことに、何も考えないようにすればするほど、脳は変な記憶を引っ張り出してくるもの。
今日もどこかで、誰かが自分の本音を垂れ流し、誰かがそれを受け取って絶望している。もしあなたが誰かと目を合わせるときは、最大限の「無」を装うことをお勧めする。さもなくば、あなたの今日の夕飯の献立が、全人類の共有事項になるのだから。
