東京駅地下の秘密施設
東京駅。毎日数十万人が行き交うこの巨大な迷宮の足元には、公に知られていない「空白」が存在する。
設計図から意図的に消去された階層――そこは、かつて帝都防衛のために掘られた防空壕とも、あるいは戦後の混乱期に闇物資を運び出すために整備された秘密の貨物路とも噂されている。
ある深夜、保線作業に従事していた作業員が迷い込んだとされる「地下6階」の光景を、彼はこう語った。「駅の喧騒はそこにはなく、ただ湿った冷気と、どこまでも続く無機質なコンクリートの壁があった」。彼がそこで見たのは、行き先不明の無人列車が、音もなくホームへ滑り込んでいく姿だったという。
興味深いことに、その車両には乗客の代わりに、厳重に封印された木箱が積み上げられていた。その箱に記されていたのは、戦前の官庁が使用していたはずの、とっくの昔に廃棄されたはずの古い公印だ。
駅の地下深くに張り巡らされた、地図には載らない連絡通路。そこを通っているのは、果たして物資なのだろうか。それとも、歴史の裂け目に葬り去られるべき「何か」なのだろうか。
深夜、丸の内側の地下通路を歩くとき、ふと足音が二重に聞こえることがあるかもしれない。それはあなたの影の反響ではない。同じ時間軸の、しかし少しだけズレた場所に存在する「彼ら」の歩調だ。
東京駅は今も眠らない。地上で人々が忙しなく行き交うその真下で、彼らもまた、目的のない旅を続けているのだから。