雪山の予告状――翌日の新聞が告げる「死」の連鎖
閉ざされた山荘の異変
標高2,000メートル、吹雪で外界から完全に遮断された「霧氷山荘」。暖炉の火が爆ぜる音だけが響く静寂の中、その新聞は玄関の郵便受けに突き刺さっていた。
日付は、明日。
最初は誰かの悪戯だと思われた。しかし、そこに記載されていた内容はあまりに詳細だった。山荘の宿泊客であるIT企業役員の男が、深夜二時に二階の廊下で撲殺される――。記事には、凶器となった置物の形状から、争った際に飛び散った血の軌跡までが、まるで現場を見てきたかのように記されていた。
時計の針が二時を指したその瞬間、山荘内に悲鳴が響き渡った。予告通り、男は記事の通りに殺されていた。
変えられない未来の「筋書き」
「誰かが、この記事の内容を強引に実行しているんだ」
生き残った宿泊客たちはパニックに陥った。彼らは互いに疑心暗鬼となり、身を守るために一つの部屋に集まり、監視し合うことを決めた。翌朝の新聞が届く前に、犯人を特定し、未来を変えるために。
しかし、二枚目の新聞は、彼らが「監視し合っていたはずの状況」を完璧に言い当てていた。 『昨夜、一室に集まっていた宿泊客の隙を突き、二番目の犠牲者が食堂で毒殺される』
警備員が目を離したわずか数秒の暗転。電源が落とされ、再び明かりがついたとき、食堂には青い顔をして絶命した女性の姿があった。
なぜ、新聞は届くのか
運命にあらがえばあらがうほど、死の密度は増していく。新聞には、彼らが取ったはずの対策が、まるでチェスの定跡のようにあざ笑うかのように記されていた。
「この新聞は予言じゃない。犯人が『こうなるように』書いているんだ」
生き残った者たちは気づく。山荘の中に潜む犯人は、新聞をどこかから受け取っているのではない。犯人こそが、この悲劇の「脚本家」であり、これから起こることを自ら手でなぞっているのだと。
しかし、なぜ犯人はわざわざ新聞という形式で殺人を予告するのか。 読者はその問いを抱えたまま、第三の新聞を読み進めることになるだろう。そこに記された最後の一行――。
『最後に残る一人は、読者であるあなた自身だ』
吹雪が止む気配はない。窓の外、深く積もった雪の下には、まだ誰も知らない「第四の遺体」が眠っている。あなたの手元に届いたその新聞を、あなたは最後まで読み切ることができるだろうか。