午前4時の落とし物:持ち主全員が消える「呪いのスマートフォン」
「そのスマホを買ってはいけない」
ネット掲示板のオカルト板で、ひっそりと語り継がれている噂がある。フリマアプリに不定期で出品される、傷だらけの古いスマートフォン。機種名は不明。出品画像には、なぜか決まって「午前4時」の時刻が表示された画面が映っている。
この端末を手にした者は、例外なく3日以内に姿を消す。警察が捜査を行っても、指紋一つ見つからず、まるで最初からこの世にいなかったかのように、持ち主の痕跡は消滅するのだ。
好奇心が招いた代償
フリーライターの私は、都市伝説を疑う性分だった。私は数ヶ月間の追跡の末、ついにその「呪いの端末」を競り落とした。出品者はプロフィールすら存在しない空のアカウントだった。
届いた端末は、画面が蜘蛛の巣状に割れ、バッテリーは異常なほど発熱していた。電源を入れると、充電残量は1%。まるで、私を待っていたかのように。
私が端末を起動したのは、深夜の午前3時55分だった。
再生された「断末魔」
アプリや写真フォルダはすべて空。唯一、ボイスレコーダーアプリにだけ、一件のファイルが保存されていた。ファイル名は「0400.wav」。
私はイヤホンを装着し、再生ボタンを押した。
最初は無音だった。しかし、4時ちょうどを過ぎた瞬間、スピーカーからノイズ混じりの「声」が響いた。
「……まだ、終わっていない。鏡の中は、もう一つの……」
それは男の声だった。次の瞬間、背筋が凍りつくような金属的な悲鳴が響き渡った。ブツリ、と途切れる音声。しかし、録音は終わっていなかった。続いて、全く別の女性の声が、すすり泣きながら囁いた。
「見つけた。午前4時の境界線。あなたも、こっちへ来るの?」
その声は、驚くほど鮮明で、まるで耳元で誰かが息を吹きかけているようだった。録音された声の主たちは、過去に失踪したと噂される人々だったのか。彼らは「別の場所」から、この端末を通じてこちら側に呼びかけているのだろうか。
終わらないカウントダウン
恐怖に震えながら設定画面を開くと、システム時刻が勝手に書き換わっていく。現在の時刻は午前4時03分。画面には、かつて見たこともない警告文が浮かび上がった。
『同期完了。あなたの痕跡を削除します』
窓の外を見ると、街灯が一つ、また一つと消えていく。私のスマートフォンの画面に映る時刻が、再び午前4時を指した。
今の今まで、確かにそこにあったはずの、自分の「記憶」や「部屋の風景」が、砂のように崩れ落ちていく感覚。
もしこの記事が公開されているなら、どうか気をつけてほしい。深夜のフリマアプリで、午前4時の画面を見せているスマホを見つけても、決してその「購入ボタン」を押してはならない。
今、私の指先は、誰かに掴まれたかのように冷たく凍りついている。 次のボイスメモが録音される準備は、もう整ってしまったようだ。